大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和60年(ネ)2250号 判決

控訴人(附帯被控訴人・被告)

兵庫県

被控訴人(附帯控訴人・原告)

藤原勲治

主文

一  本件控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人は被控訴人に対し、金一九一万七四五〇円及びこれに対する昭和五八年九月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人のその余の請求を棄却する。

二  本件附帯控訴を棄却する。

三  控訴につき訴訟費用は第一、二審を通じこれを二分し、その一を被控訴人、その余を控訴人の負担とし、附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。

事実

第一申立て

一  控訴について

1  控訴人

(一) 原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。

(二) 被控訴人の請求を棄却する。

(三) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

との判決を求める。

2  被控訴人

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

との判決を求める。

二  附帯控訴について

1  被控訴人

(一) 原判決を次のとおり変更する。

控訴人は被控訴人に対し、金四八六万三八一八円及びこれに対する昭和五八年九月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

(二) 訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言を求める。

2  控訴人

主文第二項同旨の判決を求める。

第二主張関係

次のとおり付加するほかは原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

一  原判決三枚目表八行目の「原告は、」の次に「右事故後」を、同行の「まで」の次に「の」をそれぞれ加える。

二  同五枚目表九行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「本件道路標識板は垂直、かつ、ガードレールに平行に設置されていたものであり、本件事故の原因は被控訴人が何らかの原因で自ら自転車のハンドルを左に傾かせたために道路標識板の下辺が被控訴人の左拇指の付け根に当たり転倒した結果本件傷害を負うに至つたと考えるのが合理的であつて、控訴人において通常予想しえない被控訴人の異常な自転車の運行によるものである。」

第三証拠関係

本件記録中の原審及び当審における証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  次のとおり付加、訂正、削除するほかは原判決理由説示と同一であるから、その記載を引用する(但し第五項を除く。)。

1  原判決五枚目裏末行を次のとおり改める。

「一 昭和五七年六月二六日午後四時頃、兵庫県加古郡播磨町宮西先国道二五〇号線において本件事故が発生したこと、事故現場は、車道、歩道の区別があり、ガードレールで分離されており、そのガードレール設置位置に鉄板製道路標識が設置されていたことは当事者間に争いがない。

二  右争いのない事実に原審証人三森勝雄、当審証人松本行人の各証言、原審及び当審における被控訴人本人尋問の結果、原審における被控訴人本人尋問の結果により真正」

2 同六枚目表一行目の末尾に「当審における被控訴人本人尋問の結果により被控訴人が昭和五九年四月一五日に撮影した本件自転車の左ハンドル部分の写真であると認められる検甲第二号証の四、本件標識板の写真であることには争いがなく、当審における被控訴人本人尋問の結果により藤原悦子が昭和五七年六月二九日に撮影したと認められる検甲第三号証、」を加える。

3 同裏四行目の「そのうちの」から九行目の「揺れ出ていたため」までを次のとおり改める。

「右の標識を固定させる方法として標識のポールをガードレールの支柱に添えその二個所を鉄製バンドで巻いてボルトで締め付ける方法をとつていたこと、そのうちの最も西側の標識板は右の鉄製バンドにゆるみが生じていたため固定が十分でなく、手で押せば標識板がポールごと左右に動く状態にあり、事故当時右の標識板はガードレールに平行ではなく、その東側部分が若干北側にふれて側道にはみ出していたこと、ところが被控訴人は、後方から進行して来る車に注意を向けるあまり前方に十分注意を払うことなく、かつ、側道左端に極端に寄りすぎて走行したため」

4 同七枚目表四行目の末尾に「控訴人は、本件事故の原因は被控訴人が自転車のハンドルを左に傾かせるという異常な運行をしたことにある旨主張するが、本件全証拠によるも右の主張を認めるに足りない。」を加え、五行目の「二」を「三」と、末行の「左右に」から同裏一行目の「状態にあり」までを「手で押せばポールごと左右に動く状態で、事故当時標識板はガードレールに平行でなく、その東側部分が車道側に若干はみ出していたもので」とそれぞれ改める。

5 同裏二行目の「とおりであり」の次に「(成立に争いのない乙第三号証の五及び当審証人松本行人の証言によると、本件事故の前日である昭和五七年六月二五日午前一〇時過ぎ控訴人の職員が道路パトロールカーで事故現場の道路を走行した際には右標識板の異常を認識していないことが窮われるが、このことから直ちに標識板の端が車道側にはみ出したのは右パトロール後であるとはいえないし、本件事故当時標識の設置管理者において標識板をガードレールに平行な状態にしておくことが不可能であつたとは認められず、また成立に争いのない乙第七号証及び右証言によると、右道路標識は昭和五四年一二月頃設置されたものであることが認められるのであつて、標識の固定個所がゆるみ右のような危険の生ずることを本件事故当時標識の設置管理者において予測することが不可能であつたとも認められない。)」を加え、四行目の「及び」を「遇い」と、五行目及び九行目の各「一」をいずれも「二」と、六行目の「三条」を「二条」と、一二行目の「三」を「四」と、末行の「原告」を「原審における被控訴人」とそれぞれ改める。

6 同八枚目表一行目の「一」を「二」と改め、五行目の「診断書」の次に「等」を加え、七行目及び九行目の各「原告」をいずれも「原審における被控訴人」と改め、末行全部及び同九枚目表一行目の「れるから、これ」をいずれも削る。

7 同九枚目表三行目の「原告」を「原審における被控訴人」と、五行目の「四」を「五」と、八行目の「払わない状態で」を「払わす、かつ、側道左端に極端に寄りすぎた状態で」と、九行目の「一因」を「要因」と、一〇行目の「一」を「二」と、同行の「三」を「五」とそれぞれ改め、一一行目の末尾に「なお被控訴人が歩道を走行しなかつたことは、過失相殺の事由となるものではない。」を加える。

二  よつて、被控訴人の本訴請求は金一九一万七四五〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和五八年九月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で認容すべきであるが、その余は失当として棄却すべきであるから、これと異なる原判決を主文第一項のとおり変更し、本件附帯控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 石川恭 堀武彦 小澤義彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例